憧れのアイビーリーグに入るには? 海外大学進学塾Route Hに聞いてみた
こんにちは。岩崎書店ブログ管理人の大塚芙美恵です。
近年、海外の大学入試を希望している高校生が増加しているということはご存知でしょうか?
独立行政法人日本学生支援機構が実施している、「協定等に基づく日本人学生留学状況調査」によると、昨年の日本人留学生数が60,643人で、一昨年と比べると6188人増えています。
平成28年度協定等に基づく日本人学生留学状況調査結果 – JASSO
そこで海外大学入試の「今」を知るべく、アメリカのアイビーリーグ、スタンフォード大学、MITを始めとする米国トップ大に、約60名の合格者を送り出している、海外大学進学塾のRoute Hさんにお話を伺いました。
※アイビーリーグとは アメリカ北東部に位置する8つの私立大学からなる連盟。構成大学はブラウン大学、コロンビア大学、コーネル大学、ダートマス大学、ハーバード大学、ペンシルベニア大学、プリンストン大学、イェール大学。名門大学群としてその名を馳せています。
Route H
ベネッセが運営を行う少人数制指導塾であり、「海外進学」に挑戦する中高生を支援している。
近年、高校生が進学先として海外トップ大学を視野にいれる動きが顕在化している中でトップ大学志望者に対し、必要な情報と適切な指導を提供するために2008年5月に開校。
今回お話を伺ったお二人
株式会社ベネッセコーポレーション Route H責任者 尾澤章浩様
株式会社ベネッセホールディングス 広報部 齋藤尚美様
インタビュアー:岩崎夏海
増加する海外大学入学希望者
──海外の大学に入学したいという高校生は増えていますか?
Route Hを2008年から立ち上げて、ほぼ10年近くなりますが、問い合わせや生徒数は増加しています。
──Route Hさんは、海外の大学の中でも主にどちらの大学のサポートを行っていますか?
特にアメリカのハーバード、イェール、プリンストンなどのアイビーリーグ。
その他スタンフォード、MITなどの私大を第一志望にする方の支援ですね。もちろん国内大を併願する場合もあります。
また、一部イギリスのオックスフォードやケンブリッジ、シンガポールのエールNUS、ニューヨーク大アブダビ校ほかの併願も、少しお手伝いしています。
株式会社ベネッセコーポレーション Route H責任者 尾澤章浩様
──ベネッセさんがRoute Hを始められたきっかけを教えてください
弊社の営業担当者が、学校の先生方と日々コミュニケーションを取る中で、海外大学入試を希望している高校生の増加を感じていました。そういった中で、弊社の模試の志望大学記入覧に、「海外大学」の項目をいれた際、想像していたよりも希望者が多かったんですね。世の中的にも、少しずつグローバル人材を育てる、ということが言われてきた頃でした。
そういった中で、情報の少なさやお金の問題で、海外大学入試を断念してしまうのではなく、正しい選択肢と、正しい情報を提供して支援するのが、教育の会社としての私たちの役割と思い、2008年にRoute Hを開校しました。
──それは、ある種の社会的な意義を見出されてということですよね。Route Hさんの対象年齢を教えてください
中高生対象です。ただし、実際に勉強の指導を始めるのは、高校2年生後半から高校3年生が多いです。一方で、海外トップ大進学イベントや短期講習の受講は一部中学生の参加も可能です。Route Hの卒業生に、海外大学での生活の話をしてもらうこともあります。
また、ベネッセの予備校のお茶ノ水ゼミナールで、中学生からTOEFLやSATを勉強するコースを6、7年前に立ち上げています。他にも短期留学や自治体のプロジェクトも手伝うなど様々な形で海外大学進学へ繋がる取り組みを行っています。
学力だけではない多様な審査項目
──日本の大学を受験するための英語力と、外国の大学に行くための英語力は、異なっているような気がしますが、いかがでしょうか
違う点と同じ点があります。アイビーリーグ校では、TOEFLで、120点満点中、100点以上を取ることを要件の一つに課している大学も散見されます。以前、東大入試の英語の試験と、TOEFLの点数の相関を取ったんですね。そうすると、TOEFLの約60点が、東大合格者の、英語の平均レベルに近しいという結果が出ました。TOEFLを勉強していると、難関大学の入試も高得点がとれるので、基本の英語力という部分は、同じだと思います。
一方、大きな違いはエッセイです。例えば、失敗談を問われたら、単純にエピソードと教訓を書くのではなく、そこに必ず自分らしさを織り込まなくてはなりません。自己分析をして、自分の何を伝えたいかを考えて書かなければならないんですね。
また志望動機に関しては、論理的かつ簡潔に書かせます。日本のある大学では600語与えられるところを、ハーバード大学の志望動機の場合は50語しかありません。様々な形式に合わせたライティング力が必要といった点では、高いレベルの英語だけでなく、思考力や、そもそも文章のネタになることも多い課外活動歴を求められています。
──私の知人で、アメリカの大学に行った方がいたんですけど、ネイティブの表現が難しいと言っていました
ライティングのパターンによっては、日本の大学入試の勉強では学んでいない様なものもありますね。例えば、クリエイティブな視点も重視したい大学があって、週末の自由な時間があったら何をしますかという質問に、「アフリカの青年と、ロバのひく車に乗ってバオバブの森を歩く」といった回答をした生徒もいました。すごく想像力がありますよね。
──様々なライティングの方法をRoute Hさんは、教育されているんですね。日本の大学と併願する方は大変そうでは?
卒業生過去67名のうち、約30名が東大を受けて、22名が合格していますが、一般的には大変です。ただ、2倍負荷がかかるという訳ではありません。英語はTOEFLを勉強していれば、東大の英語にも充分対応できます。またSATという様々な教科の試験も日本で習うことと通じてきます。
※SAT・・・大学進学希望者を対象に行われるアメリカの共通試験
──海外大学入試は、TOEFLやSATといった試験がありますよね。そういった学業試験以外ではどういった点をみられるんでしょうか
まずは、高校の成績を重視するといわれています。また、トップ大学になってくると、成績だけでなく、秀でた課外活動歴や大会での受賞歴なども必要で、自分の置かれた環境をいかに最大限に活かしているかを見られます。
── 英語ができる、勉強ができるだけでは駄目なんですね
そうですね。受験でみられるのは、英語力だけではないです。ハーバードも過去15名進学していますが、5人は海外経験のない日本人です。その変わり、他の分野が秀でていて、スポーツで日本代表に選ばれていた方や、プログラミングのスキルを活かしてNPOでHP作った方などがいます。
── 個性が際立っていますね。Route Hさんは少数精鋭の方たちをサポートされていますね。
Route Hでは、入塾テストを行っていますので、ある程度学力のある方が揃っています。ただRoute H以外にも、お茶ノ水ゼミナールでのTOEFLクラスや、海外大併願コースで、日本の大学にも、海外の大学にもアプライできるスキルや手続きを教えています。ベネッセの方でも、自宅でTOEFLの勉強ができるオンラインクラスもあります。なお、Route Hでは、海外にいる日本人もこれまで5名ほど遠隔でサポートをしてきました。
──アメリカではレベルの高い大学は倍率が高いと聞きますがいかがでしょうか
そうですね。アイビーリーグ校等への出願者数は、年々増えているので合格率は年々低下し「狭き門」です。そのため名門大学といわれるところに、大学院で入る方や、コミュニティ・カレッジから編入するという方も多いです。
※コミュニティ・カレッジとは アメリカの公立の二年制大学。学費が比較的安く、入学難度が低いのが特徴。
──また授業料も高騰していると聞きました
はい。しかし返済の必要のない奨学金の制度を設けているところも多数あり、ハーバードやプリンストンなどは、親の年収に応じて足りない分を出してくれます。
ハーバードにいたっては、奨学金をもらっている人は全体の6割いるんですね。様々な家庭環境で育った子がいて、多様性といえると思います。以前、ホームレスだった方が入学したと話題になりましたよね。
──裕福な家の子どもだけに限定しないような制度になっているんですね。日本人だと学費が高くつくというのはあるんですか?
まず州立大学は、州内の生徒と州外の生徒で差がつきます。更に留学生だと高くなるということはあります。しかし私立などの大学は、学費が最初から違うということはそんなにはありません。
コンフォートゾーンを出る、アメリカのトップ大学の魅力
──実際にRoute Hからアメリカのトップ大学に行かれた方はどういった点に魅力を感じているのでしょうか?
大変なこともありますが、やはりメリットのほうが多いという意見を聞きます。アメリカの大学は多様性を重視していて、様々な国の、異なった考えを持つ人々と、コミュニケーションがとれます。また、授業でのディスカッションやプレゼンの機会が多く、より多様な価値観に触れられることに魅力を感じているようです。例えば、国同士が対立関係にある両国の生徒がいる授業で、その対立関係について議論をしたりもするんですよ。驚きですが、授業後は一緒にご飯を食べに行ったりしていますが。
──それこそ対話性というのが一つのキーワードなんですね。多様性を身につけた人材を育成しているのを感じます
はい。あとは主体性も重要です。アメリカのトップ大学では、受け身の姿勢で教わるというよりも、ディスカッションによって、仲間同士で学びを育むことが多いです。与えてくれるだけのものだと、やはり自分は変えられないですよね。
Route Hの卒業生は、海外の大学に行くことをComfort Zone(コンフォートゾーン)を出ると言う人もいます。要は快適な空間をあえて出る、苦労を買いにいくということです。
──なるほど。面白いですね。他に海外大学の特徴はありますか?
柔軟な選択ができるところです。アメリカの大学では、最初の二年間は教養教育なので、入学時に学部を決めずに入り、文系理系どちらの科目も受けられます。また、二つの専攻を掛け持ちできるダブルメジャーや、休学にも理解があるというところも魅力のようです。
──アメリカのトップ大学での生活はとてもハードと聞いたことがありますがいかがでしょうか
そうですね。アメリカのトップ大学の特徴として深く、徹底して学問に向き合っています。例えば、日本の大学の授業は一学期で10から15科目程履修しますが、アメリカの大学は、1つのセメスターで、4から5科目を履修する生徒が多いです。1科目に対して実施される授業時間が多いんですね。あとは、大きな教室で行うレクチャーとは別に、少人数のグループ単位で、助手や大学院生に教わるセミナーや、科学系の授業には別にLAB(実験)があり、ディスカッションや宿題、授業のフォローなど深く学問に取り組む時間があります。宿題がハードな場合は徹夜することもあるそうです。
──入学出来てもその後の学校生活がとても大変そうですね
大学は基本勉強するところですし、学業は全体的には大変な部分もありますが、1年目から学業や生活を楽しんでいる部分や、学年が上がるにつれ充実してくる部分もあります。ただし、特に学業に押しつぶされないよう、校舎だけでなく、寮にも、学業のアドバイザー、生活のアドバイザー、先輩学生アドバイザーなどがいる大学もあり、一般的にケアは手厚いですね。
──Route Hの卒業生の方も苦労していますか?
そうですね。もちろん1年生の最初の学期などは、いろいろ慣れる必要があり苦労する場合もあります。またきつい授業などがあれば苦労はありますが、それは日本でも同じことだと思います。結果的に本人にとって良い経験になっていますし、教授の生徒への指導も手厚いと感じました。
──就職に関してはいかがですか?
まだ開校して10年目なので、Route Hの卒業生で大学を卒業している方は10数名しかいませんが、アメリカに残ってアメリカの企業に就職する人や、そのままアイビーリーグ等の大学院に行く人も増えてきました。一番多いのは日本に帰ってきて、外資系企業に行く人です。海外で学んできた英語力や知識、ネットワークを活かしています。
──これからも海外大学入学を希望する高校生は増えると思いますか?
はい。これまでもRoute Hの生徒数は、少しずつ増加していて、初年度の3名から現在は約15名になっています。また、一部の私立学校は、中学に入った時点で校内でカレッジフェアを行うんです。そこには、ほとんどの親御さんも参加します。しかし、学年が上がるごとに希望者がだんだん減ってきます。それは情報不足や、準備が遅れて間に合わない場合、または、超えなくてはいけないハードルが多いと感じる方がいるということだと思います。しかし裾野は大変広がっていて、これから更に希望者は増えるのではないでしょうか。
さいごに
今回はRoute Hさんにお話を聞きました。海外大学を目指すにあたって、ライティング力の強化や自己分析、課外活動の実績など厳しい関門はいくつかありそうです。しかし、そういった努力のもとに迎える海外生活は、日本ではなかなかな味わえない多様な価値観、そして深い学びが得られるのではないでしょうか。海外大学受験に挑戦する土壌が広がっているのは事実。これから増々海外で大学生活を送る日本人が増えるのではないでしょうか。
投稿者:大塚芙美恵