絵本で脳が活性化? 老人ホームは文化発信の場所 〜特別養護老人ホーム 壱岐のこころ〜
こんにちは。岩崎書店ブログ管理人の大塚芙美恵です。
いきなりですが、みなさんは、近年、絵本が大人にも人気であることをご存知でしょうか?
神保町の有名な絵本屋である、ブックハウスカフェさんには、連日沢山の大人のお客様がいらっしゃっていて、なんと夜間はお酒も飲めるんです!
絵本をエンターテイメントとして楽しむ方、また子ども時代の記憶に浸り、穏やかな気持ちで読む方など、絵本を楽しむ大人の姿が、そこには沢山いらっしゃいました。
絵本を幅広い年代に楽しんでもらっている今、岩崎書店では、ご高齢の方にも、児童書を読んでいただきたいと思っています。
岩崎書店が出版している本の中には、昔の道具の図鑑や、ロングセラーの絵本などがあります。こちらを読みながら、昔を思い出し、思い出を語り合ってほしいと思ったからです。
というのも、ご高齢の方にとって、昔を思い出すことは、脳機能の活性化に繋がるといわれていて、回想法という心理療法もあるほどです。
回想法・・・1960年代にアメリカの精神科医、ロバート・バトラー氏が提唱した心理療法。過去の懐かしい思い出を語り合うことで、脳が刺激され、精神状態を安定させる効果が期待できます。
そして、私たちのそういった気持ちと、高齢者の方々を、「特別養護老人ホーム 壱岐のこころ」の施設長である、鬼塚さんが結びつけてくださいました。
今回は、「壱岐のこころ」に岩崎書店の児童書を200冊、実験的に置かせてもらった事例のレポートをいたします。
前回のほほえみの園の山田さんとのご縁も鬼塚さんからいただきました!
自然豊かな壱岐島にある「壱岐のこころ」
「壱岐のこころ」さんは、長崎県壱岐島にある特別養護老人ホームです。
長崎県壱岐島は、博多港から高速船で約1時間10分の、人口約2万7千人の島です。九州北部の佐賀県東松浦半島の北西、約20kmに位置しており、神社庁登録の神社がなんと150社あります! そういった背景もあり、近年はパワースポットとしても、注目されています。
自然豊かな壱岐島にある「特別養護老人ホーム 壱岐のこころ」。こちらは 、壱岐市が44年間運営を行っていところを、2015年10月1日に社会福祉法人壱心会への経営移譲に伴い民営化されました。
岩崎書店の絵本や読み物を、「いわさき・ふみくら」として、壱岐のこころ入り口正面に設置していただきました。新たに椅子やテーブルも設置し、交流スペースとしてご活用いただけるとのこと。10月竣工予定の新しい施設には、大きな図書ギャラリーが開設されます。
現施設からすぐ近くに、新しい施設を建設中。移転は11月を予定しています。
文化発信の場所
近年、特別養護老人ホームを新設する際、地域交流スペースを設けることが必須条件となりました。「壱岐のこころ」は、新しい建物を建設している最中。地域交流スペースとして図書ギャラリーを開放する予定です。
「壱岐のこころ」の施設長鬼塚さんに、児童書と老人ホームの関係について、お話をお聞きしました。
── 地域交流スペースを図書ギャラリーにした理由を教えてください
地域交流スペースが必要とされている今、ただスペースとして場所を作るだけではなく、そこにコミュニケーションがとれる媒介があったらいいなと考えていました。その中で図書ギャラリーを作るというイメージを持ちました。
また、面会にいらっしゃる方にも喜んでいただけるように、小さいお子様も遊べるような空間にしたいと思っています。
──なるほど。本がコミュニケーションの媒介になるということですね
そうですね。また、「壱岐のこころ」はサービスを提供するだけではなく地域のプロデューサーの役割も果たさないといけないと思っているんですね。地域の方がいつでも集えるような、地域ケアの拠点にならなくてはいけないと思っています。そういった中で、文化的な活動も地域と一緒に出来ないかなと思い、本が適任ではないかと思ったんですね。
また、将来的には壱岐の人が描いた絵を飾るなど、文化的発信のような役割も担っていきたいです。
岩崎書店の絵本の絵を額装したものを寄贈させていただきました
── すぐ近くに介護の専門学校もありますね。
岩永学園グループ 学校法人岩永学園「こころ医療福祉専門学校壱岐校」も運営していて、介護士の育成を行っています。
2017年の4月に開校しまして、2年生は14人のうち8人が留学生で、今年度入学の1年生は、26人のうち17人が留学生です。皆寮生活を送っていて、とても壱岐での生活を楽しんでくれているみたいで、母国には帰らずそのまま壱岐島で就職を希望している学生がほとんどです。留学生が日本語を勉強するときに、絵本や児童書が使えるかもしれませんね。
鬼塚さん(中央)と留学生のみなさん 自国の料理を作って交流を行っています。とても仲が良さそう。
出典 http://hiroshionizuka.hatenablog.com/entry/20171011/1507648605
──ご利用者の方は絵本や児童書をどのように活用されると思いますか?
本を真ん中において職員と一緒に読書会ができるんじゃないかなと思います。絵本や図鑑を見ながら昔の話しをしたり、読み聞かせ係を決めるというのもいいかと思います。役割があるというのは気持ちにも、脳にもよい影響を与えるのではないかと期待しています。
壱岐島の魅力
壱岐島の観光にも連れていっていただきました。
鬼塚さんの「壱岐を好きになって帰ってもらう」という言葉通り、壱岐島の魅力にすっかり魅了されてしまいました。
とにかくみなさんにお伝えしたいことは、「魚が絶品!」ということです。壱岐島出身の方は、ここで取れた魚しか食べられないそうです。あまりの美味しさに、その気持ち、納得です。
そして、壱岐島は神社庁登録の神社がなんと150社! 島全体がパワースポットとしても注目されている中で、厳かな気持ちで足を踏み入れたのですが、第二の故郷と思えるような、穏やかな気持ちになれるとても不思議な島でした。
今回滞在時間が短く、ここで紹介できる場所はほんの一部です。是非みなさまも、実際に訪れてみたください! あいにくの曇りですが、晴れると海が更に青く光るそう。
そっぽを向いた猿にそっくりです
月讀神社は神道の発祥の地という説もあるくらい由緒正しい神社です
壱岐島出身の方は壱岐で取れた魚しか食べられないそうです。あまりの美味しさに納得しました。
さいごに
今回は長崎県壱岐島の「特別養護老人ホーム 壱岐のこころ」にお邪魔をしてきました。
「絵本を高齢者の方に読んでいただきたい」という希望を叶えてくださった、施設長の鬼塚さん。一日行動を共にする中で、鬼塚さんの壱岐島への愛情や、「壱岐のこころ」のご利用者を想う気持ちが伝わってきました。
そういったところから、島の人たちにとって鬼塚さんは、老人ホームの施設長である以前に、島を一緒に守っていく仲間なんだと感じました。
また、観光の後に、「壱岐のこころ」のリーダー会議を見学させていただきました。とても本格的な内容で、経営学の知識を、日々の業務に落とし込んで行動されている姿勢に、職員の方の日々の努力を感じました。
インタビュー中に仰っていた、「文化発信の場所でありたい」というお言葉。これからも児童書の出版社として、一緒に作り上げられたらと思っています。
それでは最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
岩崎書店はこれからも高齢者の方に、絵本を読んでいただくべく活動をしていきます。
投稿者 大塚芙美恵