児童虐待6
このブログトピックスも6回目になりました。
掲載が始まってから「うちも同じ目に遭っている」「今、孫が一時保護になっているけど、どうしたらいいのか!」「娘が虐待を疑われて、パニックになっている」といった相談が寄せられています。事態は本当に深刻です。
小児脳神経外科医の藤原一枝先生の投稿です。
藤原一枝
藤原QOL研究所 代表
元・東京都立墨東病院脳神経外科医長
愛媛県松山市生まれ。岡山大学医学部卒業後、日赤中央病院(現・日赤医療センター)小児科・国立小児病院(現・成育医療センター)小児神経科を経て、1974年から東京都立墨東病院脳神経外科勤務。1999年藤原QOL研究所設立。2012年からの中学1,2年の武道必修化に対し、青少年の柔道事故死の中に脳振盪軽視があることを分析し、警告を発した。国際的なスポーツ脳振盪評価ツール(SCAT)を翻訳し、公開している。
出版物は「まほうの夏」「雪のかえりみち」(共に岩崎書店)など児童書のほかに「おしゃべりな診察室」「医者も驚く病気の話」「堺O-157 カイワレはこうして犯人にされた!」など。
国家が人質にした赤ちゃんの人権は?
「面会謝絶」は何のため? 誰のため?
1.問題のプロセス
そのプロセスは以下の通りです。①病院から「虐待の疑い(可能性)がある」と通告された児相は、まず「児の安全のために、親子分離が必要」と子どもを連れ去ります。
親子分離の期間について、メドは教えてもらえず、現状3週間から上限は2か月です。長すぎませんか?
②疑いをかけられた側は、曖昧模糊としたまま児相のプログラム(再発防止など)の履修途中(その時期も児相に監視・観察されている)に、子どもを引き取れるシステムになっています。「関与終了」通知が来るまで、監視は続きます。
児相の職務としては「児相の調査・検討で虐待の有無が判明しなかったとしても、児相提供の家族再統合プログラムを半年以上受けてもらう」というスタンスです。また、この一連の判定結果は通告した病院に伝えられることもありません。
③やっと子どもが戻ってくる、という、誰に怒りをぶつけていいかわからない騒動もここで一応収斂しますが……。
2.「親子分離」と「面会謝絶」はイコールではない
ただ数年前まで、児の収容施設(病院や乳児院など)を明らかにし、数時間から終日の面会を許可していた時代や場所はあったのです。児相に余裕があったのでしょうか。
最近は、親子分離は面会謝絶と同義の扱いです。
児相が子どもを連れ出す方法は、子どもの入院中に医師が親に「一時保護」を告げる時間を使って行われることが多く、これは有無を言わせない、“確実な捕獲”です。ゆえに修羅場すらありません。
そして、これを行政処分と言います。
“捕獲者”に「弁護士」は付けられず、付けても行政処分を変えることはできません。1の②で紹介した児相のプログラムが進行します。
不服申し立ては、所長や設置行政機関の長に対してできますが、時間的な制約もあり、使いこなせない仕組みです(浅学にして、有効だった事例を知りません)。
3.面会謝絶の功罪
普通には、親との愛着形成期であり、赤ちゃん1人ひとりが親との個別対応で、発育発達していく時期です。突然その関係が途絶えるのです。生活パターンは乱れ、精神的にも混乱し、怒りや不安を感じます。具体的には啼泣が続く、食事拒否、睡眠障害があり、病的症状として発熱や嘔吐、便秘や下痢も観察されます。集団生活なので、感染しやすく、環境の影響ももろに受けます。
この時期が長くなると精神・身体の発育発達に異常をきたさないとは言えません。害が多いと断言できます。
親のほうは、子どもに会えないと、「どうしているか」「忘れないか」などと考え、疲弊していきます。せめて数時間でも面会できれば我慢できるというものです。
4.乳児院のなかで起きた事故
でも、現実はこうです。
ある乳児院で、つかまり立ちから転び、後頭部を打って意識を失った子どもが、入所のきっかけとなった元の病院に緊急搬送されたことがありました。幸い経過はよく、CTもとらず戻ってきたのですが、児相はこの事態を親に伝えたのは大分だってからです。この場合こそ、「緊急事態である」と運用に幅を持たせて、面会させてもいいのではないでしょうか。悔しいことに、謝罪も速やかになされませんでした。
また、児相は夜間休日の電話応答はしません。親の気持ちを踏みにじっているとしか言いようがありません。(詳しくは、ブログ5の漫画で紹介されています)
5.乳児院の在り方
その一方で、人を預かっている責任からは、監視(防犯)カメラも必要かもしれません。
発熱や下痢なども、児の状況によっては、夜間休日の電話対応(報告)などにも配慮が欲しいものです。
6.面会謝絶は何のため?
もし、「収容施設の実態を見せたくない」「面会は監視も含め、神経を使い、手間がかかり、人手と経費がかかる」となると、「子どもを安全に保護しているか?」と問い直すことになります。
ところが、最近ビックリする理由を見つけました。
手術をしたので、院内では付き添っていたのに、退院間近に、通告・一時保護で面会謝絶となりました。ショックを受け呆然としている母親に、5日目に、児福法27条1項3号の措置(いわゆる3号措置)についての「承諾書」が示されたのです。
3号措置は、一時保護をした後、「保護者のもとに直ちに子どもを返すのが適当でないと判断される場合に」長期分離を図るためにとられる措置です。「緊急手術したので、病状は重かった」は正しいのですが、「緊急手術するほど重かったので、虐待の可能性が高い」は全く成り立たない考えです。見込みによる、早手回し過ぎる処置です。一時保護中に守られている親権を早々放棄して、「児相所長」の思惑通りにことを進行させる手段です。手間や面倒が省けて、児相にはラクなことでしょう。
そして、「承諾書を出そうが出すまいが、自宅に子どもが戻る日は同じでしょう」の後に、「早く面会したいなら、この承諾書にサインを」と言われたのです。これって、強要でしょう。
シロ(虐待なし)の可能性を否定して、児相は構えているのです。そして、万一シロでも、グレーやクロと同じ児相のプログラムを受けさせ、子どもを家に帰し、半年以上監視し観察するというわけです。
児相が世間から「失敗は許さない」と厳しく見張られていることも事実ですが、その慎重さのツケがこの事態を生んでいます。しかし、だからと言って人間不信極まり、なんだか無駄な仕事を業務として行っているような気もします。
虐待を予防するという児相が、「面会許可」を餌に、自ら行っている(親子への)「虐待」に気付いてほしいと思います。
7.赤ちゃんの人権
赤ちゃんを取り巻く人たちが、今一度、この非業なる仕打ちともいうべき、赤ちゃんの人権蹂躙について考えてもらいたいと切に願うのです。