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絵本のタブーをぶちやぶれ! 編集者・堀内日出登巳が語る「絵本という名の闘技場」その1

こんにちは、岩崎書店のキタガワです。

 

この度、岩崎書店の編集者でセンパイの堀内が「絵本という名の闘技場」なる講義をすることになりました。

 

絵本と闘技場……? まったく結びつきませんが、いったいどういうことでしょう?

気になったので、講義について行ってみることにしました。

 

ちがう世界のDMが届いた!

話はふた月ほど前にさかのぼります。

センパイ堀内に、誰もいない会議室へ呼び出されました。

 

センパイ堀内 おれの写真を撮ってくれ。

キタガワ えっ、おれの写真ですか!

 

用途も聞かされないまま、写真を何枚か撮りました。

 

なぞの撮影会から数週間後、センパイ堀内から手渡されたハガキを見てびっくり。

「なんですか、これ~~!」

 

児童書業界では見たことのないデザイン!

センパイ堀内が担当した本が気持ちよく並んでいる!

ややこしい名前の読み方も分かりやすい!

 

f:id:kiix:20170817093342j:plain神戸芸術工科大学で行われる特別講義「絵本という名の闘技場」のDM(お知らせハガキ)

 

あのとき撮影した写真は、DMやポスターに使われていたのでした。

 

f:id:kiix:20170818193942j:plain口が半開きの微妙な表情を写し出すことに成功

 

どうしてこのような講義をすることになったかというと、

神戸芸術工科大学(以下:芸工大)の教授・ビジュアルデザイン学科主任に画家の寺門孝之さんがいらっしゃいます。

その寺門孝之さんが今回、特別講師としてセンパイ堀内を召還したのです。

 

キタガワ センパイ堀内の講義、聴きたい……。行っていいですか?(ダメもと)

会社 よし。(あっさり!)

 

というわけで、新幹線に飛び乗り、はるばる神戸に到着です。

 

駅で待っていてくれたのは、芸工大ビジュアルデザイン学科実習助手の坂田玲央さん。

お若くて、おしゃれ! DMのデザインをしてくださったのも坂田さんです。

センパイ堀内の名前の読み方を分かりやすくしていただき、ありがとうございます。

 

f:id:kiix:20170817093608p:plain駅まで迎えにきてくださった坂田玲央さん。

 

駅周辺は、のんびりとした空気が流れています。

坂田 こういう立地のおかげか、学生たちもみんなのんびりして、いい雰囲気なんですよ。

 

すばらしい環境で勉強できる学生さんたち、羨ましいです。

大学が見えてきました。

 

f:id:kiix:20170817093835j:plainKOBE DESIGN UNIVERSITY! 

 

キャンパスは緑が多くて、シロツメクサらしき花が咲いています。

 

f:id:kiix:20170817093912p:plain芝生とウッドデッキがある大学でのキャンパスライフ……(うっとり)

 

エレベーターを上がろうとしたところで、一枚の絵に目がくぎづけになりました。

センパイ堀内 これは……!

ビジュアルデザイン学科の入り口に、寺門孝之さんの天使の絵が!

 

f:id:kiix:20170817094004j:plain壁が赤い。おしゃれすぎじゃないでしょうか

 

センパイ堀内 贅沢ですね〜。

坂田 ですよね。カフェテリアにも、大きな絵がありますよ。

 

エレベーターを上がり、職員室で待つこと数分。

「こんにちは~」

天使のように軽やかに、寺門孝之さんが登場しました!

 

センパイ堀内 こんにちは。今日は、よろしくお願いします。

寺門 よろしくお願いします。時間まで、お茶でもしましょうか。

 

f:id:kiix:20170817094121j:plainカフェテリアにも寺門孝之さんの大きな絵。ここで半日ぼーっとしたいです

 

〈講義がはじまるまで、作家編集者の会話をお楽しみください〉

センパイ堀内 おかげさまで、怪談えほんシリーズ好調です。『おんなのしろいあし 』岩井志麻子・作/寺門孝之・絵/岩崎書店)も順調に版を重ねています。

寺門 いいですねえ。

センパイ堀内 めくってびっくり短歌絵本『納豆の大ドンブリ』(穂村弘・編/寺門孝之・絵/岩崎書店)も、刊行して10年経ちますが、未だに売れているんです。とても刺激的なつくりをした絵本でしたよね。

寺門 あれはいいよね。表向きは学習絵本なのだけど、中身は思いきった解釈をしている。

センパイ堀内 絵本の醍醐味を感じられます。

寺門 ディスクジョッキーのような絵本だよね。

センパイ堀内 ところで寺門さんは、大学ではどのような講義をされているんですか?

寺門 実習が多いですね。学生が書いてきたものをみんなで見たりとか。しゃべるだけの講義は少ないです。

センパイ堀内 ビジュアルデザイン学科は、デザインの授業が中心なんですか?

寺門 イラストレーションをやりたくて入ってくる人もいます。次第に、各分野に分かれていく感じですね。

センパイ堀内 絵本の授業は?

寺門 ありますよ。2006年ごろは、絵本ブームで、絵本をやりたい人がたくさんいたんです。でも、いまは少し落ち着いてきたかな。子どもたちがシビアになってきましたよ。就職しないとって。

センパイ堀内 デザイナーやイラストレーターや絵本作家は、フリーですものね。就職率には含まれない。

寺門 企画を思いつける学生を育てたいと思ってやってます。せっかく大学に来たのだから、創作以外にも、企画者としての視点も学んでほしいと思っているんです。だから、今日の編集者の講義も楽しみにしているんですよ。

 

画家として活躍しながら、学科の運営もされている寺門孝之さん。未来を担う学生たちのことを真剣に語る様子に胸うたれました。

 

さて、いよいよ講義の時間。

講義室の前にやってくると、センパイ堀内を待つ人影が……。

「堀内さ〜ん」

 

センパイ堀内 しりあがりさん!

しりあがり寿 堀内さんが来るときいて、待ってました。

 

芸工大まんが表現学科の教授、漫画家のしりあがり寿さんです。

 

しりあがり寿 きょうは堀内さんの講義聞けなくて残念だなあ。

センパイ堀内 いやいやいや、居なくてよかったです。頭真っ白になります。

 

しりあがり寿さんは、岩崎書店でも絵本を2冊出版しています。

その担当が、センパイ堀内なのです。

 

しりあがりさんが待っていてくれた……というだけで幸せです。

ありがとうございました。

 

f:id:kiix:20170817095027j:plain左から 寺門孝之さん、青林工藝舎の手塚能理子さん(まんが表現学科非常勤講師)、センパイ堀内、しりあがり寿さん

 

絵を「描かせる」仕事、編集者。

いよいよ講義がはじまります。

すごい広い講義室です。センパイ堀内は大丈夫でしょうか……ドキドキ。

 

f:id:kiix:20170817095200j:plain学生の熱気がすごいです

 

まずは、寺門孝之さんのご挨拶です。

 

寺門 芸工大には絵本制作コースがあって、日々絵本をつくっている生徒がいるわけですが、僕は絵本『納豆の大ドンブリ』それから『おんなのしろいあし』で堀内さんにお世話になりました。

それから2010年に、『ローズプラスエクス 』(寺門孝之・責任編集/左右社)というビジュアル雑誌をつくったのですが、その中で、絵本放談という企画を持ちました。そこで感じたのは、編集者という仕事のおもしろさです。

編集者がちがうと、画家は同じテキストをもらっても絵がまったく違うものになります。絵を描かせる仕事、というのはどんなものなのか興味を持ちました。それで、今回講義に来てもらったというわけです。では、よろしくお願いします。

 

f:id:kiix:20170817095336j:plainセンパイ堀内を紹介してくださる寺門孝之さん

 

 

f:id:kiix:20170817095430j:plainローズプラスエクスの企画「絵本放談」。絵本の反抗期、気になります

 

センパイ堀内 こんにちは。児童書の出版社で働いています、堀内です。これまで、絵本だけで100冊くらい手がけてきました。

 

プロレス本から絵本へ

センパイ堀内 幼少のころは、ほとんど絵本を見ないで育ちました。20代は格闘技系の出版社でプロレスのムック本などを編集していました。当時の同僚のおかげで”ある絵本”の存在を知り衝撃をうけたのが、絵本と僕との本当の出会いです。その絵本は『やまのかいしゃ』(スズキコージ・作/片山健・絵/架空社)といいます。これから朗読してみます。

 

『やまのかいしゃ』はページいっぱいに字がぎっしりと詰まっています。ぜんぶ平仮名です。センパイ堀内は、つらつらつらつら、早口といえるような口調で読んでいきます。小学校の先生に怒られそうです。

ところが、この句読点完全無視のつらつら読みが何とも心地よいのです。だんだん、クセになってきます。

 

f:id:kiix:20170817095633j:plainへんてこな物語です

 

くだらないものを大人が真剣に作っている世界に惹かれた

センパイ堀内 『やまのかいしゃ』めちゃくちゃな話でしたね。こんなくだらないことが絵本の世界でおこっているのか……一流の絵本作家と一流の編集者と、大人がよってたかってこんなくだらないものを作っているのか……と感動を覚えました。

 

感動するところが独特です。

 

センパイ堀内 作と絵が別の場合、作者と画家は共犯者なんですね。どのような相乗効果が起こって作品ができあがるのか、未知数です。『やまのかいしゃ』はスズキコージさんの(いい意味で)だらだらとした文章に、片山健さんもふわふわとした不思議な世界を描くことで応えています。

 

たしかに『やまのかいしゃ』の主人公ほげたさん、見てるだけでほげ〜っと幸せな気持ちになってきます。

 

センパイ堀内 この絵本を開いてまず大人がびっくりするのは、ページ一面のひらがなです。漢字というのは表意文字ですよね。それ自体に意味があるんです。ただ、絵本の中では意味を放ちすぎてしまう。絵本のおもしろいところは、ひらがなによって、すこし意味が失われるところだと僕は思っています。ひらがなによる非日常感というか、違う世界へ連れて行ってくれる感覚。大人が絵本を楽しむ要素のひとつだと思っていて、今でも、絵本づくりで大切にしている部分です。

 

 

ふむふむ……と、はじまったばかりですが講義はおよそ3時間。長い!

というわけで次回は講義のつづき「ナンセンス絵本」についてお届けします。まだまだ面白い、絵本のお話がたくさんです。おたのしみに。

 

寺門孝之さんの2作目の絵本がこちら。穂村弘さんとの共犯をお楽しみください。

 

納豆の大ドンブリ―家族の短歌 (めくってびっくり短歌絵本)

納豆の大ドンブリ―家族の短歌 (めくってびっくり短歌絵本)

 

 

岩井志麻子さんと寺門孝之さんの艶っぽい共作をご堪能ください。

怪談えほん (7) おんなのしろいあし (怪談えほん7)

怪談えほん (7) おんなのしろいあし (怪談えほん7)

 

 

 

寺門孝之さんが責任編集を手がけたビジュアル雑誌がこちら。美しい。 

ローズプラスエクス vol.1

ローズプラスエクス vol.1

  • 作者: 寺門孝之,町田康,荒井良二,しりあがり寿,若尾文子,山口はるみ,荒戸源次郎,廣中薫,久本直子,陶智子,三枝克之,谷口広樹,村田智,西川隆範,赤崎正一,戸田ツトム
  • 出版社/メーカー: 左右社
  • 発売日: 2010/10/18
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やまのかいしゃ

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堀内が編集した、しりあがり寿さんの絵本 その1 声に出して読みたい。

はしるチンチン (えほんのぼうけん)

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堀内が編集した、しりあがり寿さんの絵本 その2 子を想う親心に号泣です。

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投稿者 キタガワ