2月新刊『クーちゃんとぎんがみちゃん ふたりの春夏秋冬』著者インタビュー【前編/著者・北川佳奈さん】
2月15日発売、『クーちゃんとぎんがみちゃん ふたりの春夏秋冬』は、カカオの町に住む板チョコレートのクーちゃんとなかよしのぎんがみちゃんの、四季を通じてくり広げられる、ふたりのとろけるような楽しい毎日を描いたお話です。
今回は発売を記念して著者の北川佳奈さんに、『クーちゃんとぎんがみちゃん ふたりの春夏秋冬』の誕生秘話や執筆にあたってのお話などを伺ってみました。
岩崎書店にてインタビューを受ける北川佳奈さん
―――小川未明文学賞という晴々しいデビューから、2作目。デビュー作とはまた違ったテイストの作品の執筆に至った経緯やきっかけを教えてください。
小さい女の子のお友だちが、絵のプレゼントをしてくれたんです。その絵の中に、板チョコが赤いリボンをつけた絵があって、その絵を見たときに「なんてかわいいんだろう!」と思ったことがきっかけで、板チョコを主人公にしたお話を書こうと思いました。
写真左の方に、“板チョコが赤いリボン”をつけた絵が!
―――実際に本を手にされていかがですか?
クーちゃんとぎんがみちゃんと、ずっと昔から友だちだったような、そんな気持ちになりました。
赤い表紙やくらはしれいさんの絵といった、本のたたずまいが、そう感じさせるんだと思います。
―――「板チョコ」と「銀紙」。2つはパートナーのような存在ですが、「ぎんがみちゃん」というキャラクターは最初から決めていたのですか?
板チョコの女の子に相棒みたいな仲良しの子がいたらいいなと思い、5円チョコちゃんとか、パラソルチョコ婦人とか、いろいろ候補をあげていたとき、夫が「銀紙」と言ったんです。
子どものころから板チョコはもちろん、キスチョコやフィンガーチョコレート、コインチョコレートなど、銀紙に包まれたチョコレートが大好きだったことを思い出しました。これはもう、銀紙しかない! と思い、ぎんがみちゃんにしました。
―――クーちゃんとぎんがみちゃん以外にも、作品の中で、ユニークなキャラクターが登場します。お気に入りのキャラクターはいますか?
ウイスキーボンボンさんは愛着があるのですが、酔っぱらっていそうなので、わたしはフィンガーチョコレートさんのお店に行ってみたいです。
(*どんなキャラクターなのか、どこで登場するのかは、ぜひ作品をご覧ください!)
―――作品中の独特な言い回しは(例:冬のわすれものみたいなお花)、北川さん特有の表現ですよね。普段から意識して、いろんなものを見るようにされているのですか。
また、その見えたものを作品に活かされているのでしょうか?
普段はついぼんやりしてしまいがちで、何かを見ても「きれいだな」と思うくらいです。
実際に書くときになると、どこからかひょっと言葉が出てきます。あとから読み返すと、本当に自分が書いたのかな? と思うこともあって、不思議です。
―――作品内のエピソードは、本当にありそうな日常の様子がたくさん書かれていますが、これは北川さんの実体験も入っていますか?
はい。中には実際にあったことも入っています。
特にコロナ禍で「友だちに会いたいな」とか「家族が元気でうれしいな」とか、自分の大切なものを確認することができて、それがエピソードに生かされていると思います。
ここからは、北川さんへの作家になられたきっかけや、普段のご執筆のことについて伺いました。
インタビュー中も終始笑顔の北川さん
―――作家になろうと思ったきっかけは?
どこにいても仕事ができるという身軽さに憧れていました。家とか公園が好きなので。
―――この作品の執筆中に詰まったときはありましたか。また、そうした際、普段はどうされていますか?
『クーちゃんとぎんがみちゃん』に関しては、すんなり書けた方だと思いますが、普段はつまずくことばかりです。
そんなときは、パソコンに保存してある「発酵部屋」というフォルダにいったん放り投げて忘れるようにしています。パンのように発酵してくれるといいなと思いながら……。
―――作品のアイデアは、何をされているときにひらめくことが多いですか?
お散歩しているときと、夫と話しているときに思いつくことが多いですね。夫は自分とは違う視点を持っているので、創作のきっかけをもらうことがよくあります。
また、ひらめいたアイデアは、忘れないように書き留めるのですが、手近な紙に書いてしまうので、箱に入れてとってあります。
お話の原石がつまったアイデアの宝石箱
中には『クーちゃんとぎんがみちゃん』執筆中のメモ書きも。板チョコがコートを着ている絵だそうです。
―――いちばん集中できる時間帯はいつですか?
ぜんぜん集中できません。すぐさぼってしまうので、最近はこけしに見張ってもらうようにしています。
10年前、鳴子に出かけたとき、いちばんいじわるな顔の子を選んだのですが、見張り役にちょうどいいなと思い、パソコンの後ろに置いています(笑)この子と目が合うとがんばろうと思えるんです。
―――執筆中のおともになるおやつはありますか?
やっぱりチョコレートですね。パッケージも可愛いものが多かったりして、特別な存在です。銀紙に包まれたチョコが少なくなっている気がするので、昔から変わらないキスチョコが好きです。
母が沖縄出身なので、アメリカのお菓子のキスチョコがいつでも家にあり、小さいころは鼻がつーんとするほど食べていました。
銀紙に包まれたキスチョコ
―――バレンタインデーが近いですが、何かバレンタインデーの思い出があれば聞かせてください。
男兄弟に囲まれて育ったので、ひとりだけもらえなかったらかわいそうだと家族が思ってくれて、母や祖母から毎年もらっていました。そのため、バレンタインデーが大好きです。
大人になった今も、なんだかチョコレートがもらえる気がしています。
―――最後に、この作品を読んでくれた子どもたちに何か伝えたいことはありますか?
今、子どもたちは、我慢をしなくてはならないことも多く、本当に大変な状況だと思います。
この本は、毎日の暮らしの中にちょっとしたよろこびを見つけるお話です。ものすごく楽しかったことは記憶に残ると思いますが、ささいなできごとは忘れてしまうものです。ごはんを食べておいしかったことや、お友だちと話してくすっと笑ったことなど、クーちゃんとぎんがみちゃんのように、小さな楽しみを見つけながら過ごしてもらえたらうれしいです。