現役2歳児が爆ウケする約40年前の絵本『なにをたべてきたの?』
みなさん、こんにちは。
岩崎書店は年間数十点の絵本を出版しています。
なので、絵本の話が大なり小なり聞こえてくると「ピクッ」と反応するんですよね。
友人からのこんなメールには「ピクピクッ」ときたわけです。
「40年前の絵本に我が子、爆ウケだよ~♪」という内容で、
読み聞かせの動画付き。
すごいですねぇ、40年前ですか。
友人の子は2歳半なんですが、動画を見ると確かにすっごいウケてます。
なにこの高反応……
幼児というのは一番シビアな観客でして。
読み聞かせ活動をしていると、ときどき辛い目に遭うのです。
お子様に「最後まで見てあげなきゃ~」とか「せっかく読んでくれているんだから聞いてあげなきゃ~」なんてお気遣いは一切いただけないんですよね。
つまらなかったら、すぐどっか行っちゃう、泣いちゃうわけです。
もちろん、その時の機嫌や読む人にもよるのですが、
友人の子の高反応には心を鷲づかみにされました。
タイトルは『なにをたべてきたの?』という絵本だそうで。
出版社は佼成出版社さん。
こんなとき、“他社本”だとちょっとジェラシーを感じるのは、出版社の人間ならわかっていただけるでしょうか。
『なにをたべてきたの?』岸田衿子・文 長野博一・絵 佼成出版社
子供を笑顔にするために自社も他社も関係ない。
ジェラをぐっと抑えて『なにをたべてきたの?』の魅力について勉強させてもらうことにしました。
調べてみたところ、佼成出版社さんから1978年に出版されたというから、39年前ですね。
1978年といえば、原宿に竹の子族登場し、ピンクレディがレコード売上枚数トップ3を独占した時代です。
絵本界では有名作品だそうで。
数々の絵本評論家、読み聞かせのプロ、保育士が賞賛する、ロングセラーの定番中の定番。
……、友人の子の反応を見る限り、噂に違わぬ実力があるということか……
物語はシンプル。
白いブタがりんご、レモン、メロン・・と果物を次々に食べていく。
最後に食べるのが、なんとびっくり!「○っ○ん」(これは果物じゃありません。白くてツルツルしたもの。わかりますか?)。
食べるシーンはどアップ!すごく美味しそうに見えるんですよね。
絵もシンプル。
背景の描き込みはありません。
「去年、出ました」と聞いても違和感がないほど、古くささを微塵も感じさせません。
表紙のタイトル文字のデザインも古さは皆無です。
(デザイナーのお名前が書かれていませんが、どなたの手によるものなんでしょう)
しかし、シンプルな絵本は昔からありますし、今、新刊もたくさん出ています。
そもそも幼児向けはシンプルが基本なんです。
数多ある絵本の中で、『なにをたべてきたの?』が約40年間も愛され続けているのは何故なんでしょう?
この秘密、ぜひ突き止めたいものです。
そこで、絵本評論家の後路好章先生にお話を伺ってみることにしました。
後路好章 うしろよしあき
1940年北海道に生まれる。絵本作家、絵本評論家、編集者。赤ちゃん絵本研究会代表。北海道大学卒業後、学研、あかね書房、アリス館にて編集長を歴任。著書に『絵本から擬音語擬態語ぷちぷちぽーん』(アリス館)、絵本作品に『うまれるようまれるよ』(絵・かさいまり、アリス館)、「おじいちゃんと日の出を見たよ」(佼成出版社)、『だあれだ だれだ?』(絵・長谷川義史、ポプラ社)、『あそぶのだいすきこぶたちゃん』(絵・とみながゆう、赤ちゃんとママ社)などがある。
――後路先生、『なにをたべてきたの?』という絵本ですが、ご存知ですか?
後路先生:もちろん!ロングセラーの定番中の定番だよね。
――やはり。
2歳半の子にこの絵本を読み聞かせた動画があるんです。
ご覧ください!この熱狂的な反応!
この子は何度もこの絵本を読んでもらっているんですが、何度読んでも大喜びだそうです。
後路先生:いい反応だねぇ。絵を楽しんでいるね。絵を“読んでいる”。
2歳半だと、お母さんから言葉を聞きながら絵を楽しむことがしっかりできるようになるんだ。
――『なにをたべてきたの?』は約40年前に作られた絵本なんです。
40年間、どの時代の子どもにも受け入れられ、楽しまれてきた。
この秘密はどこにあると思われますか?
後路先生:大きくは4つあるかな。
まずは「食べる」が描かれていること。
「食べる」ことは子どもにとって日常そのもの。
この子を見ていると、子どもは食べものの絵本が大好きなのがよくわかるね。
ブタくんが果物を食べるたびに、「むしゃ、むしゃ」と食べる真似をする。
後路先生:次は、「次々と出てくる」こと。
この作品では、次々と果物といろんなブタくんが出てくるよね。
絵本の典型だね。
2歳半にもなると「今度は何が出てくるかな?」「誰と出会うんだろう?」と期待するようになる。面白さが連続するんだ。
この単純な構成は幼い子どもにピタッとくるね。
「次、何だろう?」何度も読んでもらって知っているのに聞く。
後路先生:それから、「知っているものが出てくる」こと。
この作品に出てくるりんご、レモン、メロン……は、全部自分が知っているもの。
日常と重ね合わせて楽しむことができるんだ。
果物を食べるたび、お腹にまあるい色がつき、お友達のブタくんに出会います。
(お腹のまあるい色を指差して)「りんご食べてる、レモン食べてる……」
後路先生:そして秀逸なのが、「奇想天外な展開」。
「次は石鹸を食べちゃうの⁉」という驚きも子供を楽しませる。
展開が面白い!
(前半のクイズ「○っ○ん」は「せっけん」でした!)
「次何かな?」というママの問いかけに、「せっけん!」
何という嬉しそうな顔!^^
後路先生:「石鹸、食べちゃダメだよ~」ってブタくんに言いたくなるんだよね。
石鹸を食べたブタくんがコロコロ転がって……、「ほら、失敗しちゃったじゃないの」って子どもはしたり顔になるのもまた楽しいんだよね。
これは、子どもが喜ぶ要素がすっきりまとまっている素晴らしい作品だよ。
――なるほど!
一冊に要素がぎゅっと!!
要素は入れればいいってもんじゃない。うまく組み立てねばならない。
簡単なようで非常に難しい作業ですよね。
これを実現した岸田衿子先生はやはり素晴らしい。
そして、長野博一先生のシンプルな線で描かれたブタくんと果物は、幼い子の想像の中で生き生きと動くのでしょう。
しかし、この子はいい笑顔をしていますね。本当に嬉しそう。
後路先生:お母さんにだっこされて読んでもらっているけど、
これを僕は「だっこ読み」と呼んでいるんだ。
1歳過ぎるとお気に入りの絵本を自分で選んできて、だっこ読みしてもらうのが大好きになる。
だっこ読みは、子供の背中とお母さんのお腹がくっついているよね。
子供は耳でお母さんの声を聞いていると同時に背中でも聞いているんだ。
これは子供にとってすごく嬉しいこと!
「お母さんと自分の二人の時間なんだ」と思える。
この動画の子も、絵本を楽しむと同時に「お母さんに愛されているんだぞ」という気持ちが顔に表れているよね。
――この嬉しそうな顔を見ると、絵本の出版社の者として冥利に尽きます。
より多くの子どもたちに、はじけるような笑顔を届けたい!
その思いを胸に、岩崎書店一同、これからも精進してまいります。
ご自分のお子さん、お知り合いのお子さん、お孫さん、姪っ子さん、甥っ子さんなどへ絵本をプレゼントしたいとお考えの方。
『なにをたべてきたの?』をお選びになるといいと思います。
その後、いろんな子に読み聞かせしてみましたがいつもヒット!
どんな子も喜ぶ絵本と実感(例外はいないとは言い切れませんが)。
対象年齢は1.5歳~3歳がベストかと。
この記事は佼成出版社さんから頼まれて書いたわけではありません。
岩崎書店の一社員が純粋な気持ちと情熱、そして大きな自信をもってオススメしています。
投稿者 pome