3月新刊『クーのたんじょうび』著者・しろさめさんインタビュー
3月14日発売、『クーのたんじょうび』は、しろくまのクーとオリヴェールの友情を温かく描いた作品です。
今回が絵本デビュー作となる、大人気イラストレーターのしろさめさんに発売を記念して、『クーのたんじょうび』の制作秘話や、しろさめさんご自身のことを伺ってみました。
しろさめさんSNSアイコンより
―――「クーのたんじょうび」出版おめでとうございます!
今回が絵本デビュー作ということですが、この作品をつくることになったきっかけや制作に至るまでの経緯を教えてください。
一昨年の秋頃に、その年に出版した『やさしいしろくま』(KADOKAWA)を見てくださった岩崎書店の担当編集さんにお声掛けいただいて、絵本制作が始まりました。
普段から物語の種のようなものはストックしているのですが、そのうちの一つだった「友達の男の子みたいになりたいしろくま」というアイデアからスタートしました。
―――実際に本を手にされていかがですか?
まるで一つのギフトのような、誕生日絵本にぴったりの素敵な仕上がりにしていただけて大変嬉しいです。
こうして一冊の絵本という形になったことで「クーとオリヴェールの居場所をこの世に与えてもらえた」という思いを強く感じました。
―――この作品を執筆中に苦労したことなどはありましたか?
初めての本格的な絵本制作でしたので、正直わからないことばかりでした。これまで物語を表現する手段としては漫画を用いていたので、絵と文字のバランスを取るのが難しかったです。
後半の展開も、どうしたら最後クーが笑顔になれるかかなり悩んだ記憶があるのですが、家族からアドバイスをもらったり、担当編集さんにたくさん助けていただいたりしました。
―――クーはお話の中で、ずっとくまの人形と一緒ですが、このくまの人形はクーにとってどんな存在なのでしょうか。
クーにとっては「大切な小さなお友達」に違いないと思います。きっとずっと前からこの子をおねだりしていて、ようやく誕生日に買ってもらえたので嬉しくて仕方ないのではないでしょうか。ちなみに最後のくまの人形ですが、オリヴェールがクーへのプレゼントのメダルに使ったのと同じリボンを結んであげた、という裏話があります。
―――そんな裏話があったのですね! 作品の中に出てくるひとつひとつの小物がとっても可愛くて…何度も見てしまいます。
ありがとうございます。生き物モチーフの小物が好きで普段から自分で作ったり絵に描いているのですが、おさかなポーチは以前描いた絵に出したのをきっかけに、絵本にも登場させてみました。
子どもの頃、島田ゆかさんの「バムとケロ」シリーズ(文溪堂)に登場する小物を眺めるのが大好きだったので、自分の絵にもそういった楽しみを取り入れられたらという想いもあって色々な小物を描いています。
しろさめさんが元々描かれていた絵。本作で登場した「おさかなポーチ」がここにも。
―――市場でオリヴェールがお買い物をするシーンで、文字が書いてある張り紙が出てきますが、このお話の舞台はどこでしょうか。
北欧あたりにある、とある国の小さな町という設定で描いています。森と海に囲まれた自然豊かな土地で、動物と人間がのんびり暮らしています。文字も食べ物もちょっと不思議で、私たちのこの世界とはまた違った暮らしぶりを楽しんでいただけたら嬉しいです。
―――この絵本を読んでくださった読者・ファンの方にメッセージをお願いいたします。
「誰かのようになりたい」という想いは己を高める原動力となりますが、同時に理想に及ばない自身への歯痒さで苦しくなってしまうこともあると思います。
ところが届かないと思っていた人も実は誰かに憧れていて、ひょっとしたら自分も誰かの憧れになっているかもしれない。中々気づかないだけで、きっと心根は誰もが同じなのではないでしょうか。自分を歪める必要なんてないのだと、クーとオリヴェールの関係から感じ取っていただけたらこの上なく幸いです。
特別公開! 『クーのたんじょうび』ラフ案
実際の絵本には出てこない超貴重なラフも!
3枚目が実際に絵本に出てくるページ。ラフの時からかなり精密に描かれています。そして色がつくと、世界観がぐんと深まりますね!
ストップモーションのような、とっても愛らしいクーのイラスト…!
2枚目が実際に絵本に出てくるページですが、「まえが しまらない…」のイラストは、しろくまのお腹のぽっこり具合が出るように本画で調整して頂きました。
こちらはラフ制作中に設定案として描いていただいたもの。このブログでしか見られない超貴重ラフです!
ここからは、絵を描くきっかけになったことなど、しろさめさんご自身のことについて伺いました。
―――クーはオリヴェールにあこがれを抱いていますが、しろさめさんご自身はあこがれている方はいらっしゃいますか。
憧れている方は沢山いるのですが、特に安野光雅さんの芸術に対する眼差しや星野道夫さんの人生観に強く惹かれています。
日々生きている中で気持ちが行き詰まった時、必ずこの方々の本を開いています。
―――しろさめさんが絵を描かれる上で影響を受けた作家さんや作品はありますか?
前述の安野光雅さんやいせひでこさん、リスヴェート・ツヴェルガー、ジル・バークレム、小原古邨、吉田博など、色々な方から学ばせていただいています。
作品ですと子どもの頃、林明子さんの『こんとあき』(福音館書店)、中川李枝子さんの『ももいろのきりん』(福音館書店)『いやいやえん』(福音館書店)、ドン・フリーマンの『くまのコールテンくん』(偕成社)などがすごく好きで、日頃描いている「人と動物」のルーツは主にこの辺りから来ていると感じています。
―――しろさめさんが、しろくまの絵を書くきっかけはなんだったのでしょうか?
しろくまをはじめ動物は昔から好きだったのですが、動物を自分が思うように描ける自信がなく、以前は人をメインにイラストを描き続けていました。
けれど中々自分が納得できる絵が描けなくて悩んでいた時「臆することなく、本当に好きなものを好きに描けば良いのではないか?」と思い至り、大好きなしろくまを描き始めるようになりました。当時足繁く動物園に通っており、目の前で悠々と泳ぐしろくまに感化されたのも大きなきっかけでした。
―――最後にお誕生日の思い出がありましたら教えてください!
冬生まれなのですが、幼い頃に兄が新聞紙で大きな雪だるまを作ってくれたのを何故だかよく覚えています。
また中高生の頃、今でも仲の良い友人と同じ誕生日だったので学校で一緒にお祝いしてもらい、そして祝い合ったのがとても思い出に残っています。誕生日といえば祝われる日ですが、私にとっては祝う日でもあったりします。
「祝い合う誕生日」とっても素敵ですね。
本作でも、オリヴェールがクーを喜ばせようとする姿に心温まります。しろさめさんの想いが詰まった『クーのたんじょうび』ぜひお手にとってみてくださいね。