求められる人材を生み出す 専門学校の今を聞いてみた
岩崎書店ブログ管理人の大塚です。
いきなりですが、みなさんは、eスポーツをご存じですか?
「エレクトロニック・スポーツ」の略で、主にコンピューターゲームを使って対戦するゲーム競技のことを指します。
調査会社「Newzoo」によると、世界のeスポーツ市場が2018年に9億500万ドル(約970億円)に達すると試算されており、競技者である世界のトップクラスのプロゲーマーは、なんと、年収1億円以上という人も!
そんな大注目のeスポーツが学べるコースを日本で初めて採用したのが、学校法人滋慶学園です。
世の中の移り変わりが激しい昨今、急成長する市場に伴い、新しい仕事も増加しています。そのような新しい仕事に対応し、求められる人材をいち早く生み出す場所である専門学校。
世の中に求められる人材をどうやって育成しているのか、学校法人滋慶学園のみなさまに、弊社CEO岩崎夏海が話をきいてきました。
学校法人滋慶学園さんが運営する、 東京放送芸術&映画・俳優専門学校、東京アニメ・声優専門学校にお邪魔して、お話を伺いました。
(左から)滋慶学園COMグループ中川様、学校法人 滋慶学園香川さま、内海さま、久野さま
専門学校は常に新規開拓が必要です
岩崎夏海(以下 岩) 2020年に大学入試改革が行われるなど、日本の教育は変わろうとしています。そういった中で滋慶学園さんは、専門学校として、仕事に直結するスキルの教育をされているという印象がありますが、いかがですか?
中川さま(以下 中) 大学は学問を学ぶところですが、専門学校は仕事をするうえで、より実務的なスキルを身に着けるという位置づけです。以前までの、大学、短大、専門学校という順列をつける考え方とは大きく変わって、それぞれで学校の役割が違うという認識を皆さん持っています。
岩 そういった中で、滋慶学園グループが最初に設立されたのは歯科技工士養成校でした。しかし現在は、エンターテイメントの分野や、スポーツ、製菓、福祉、動物など時代の変化に対応して、新しいコースが次々と生まれています。
中 そうですね。例えば東京アニメ・声優専門学校では、新しいコースとして、eスポーツのコースが設立され、また、ドローンの授業が来年から行われるなど新しい取り組みを行っています。
岩 なるほど。
中 専門学校は、社会の変化に合わせて、世の中が必要とされる人材をつくっていかなくてはなりません。時代が求めている人材を我々が率先して育てると いうことが目標です。
岩 それは常に新規開発しているということですね。
中 そうですね。常にアンテナをはっています。東京アニメ・声優専門学校では、3年前から eスポーツのコースも始めました。
eスポーツコースの学生さんが、大学のゲームのリーグで優勝したときのメダル。世界大会への出場権を手に入れました。
珍しい!転校制度
岩 みなさんにとって仕事をするうえでの目標を聞かせてください。
中 はい。入学してきた学生全員を専門職でデビューさせるというのが、我々の目標です。
岩 しかしそれでも、様々な事情で学校に来れなくなる学生さんもいますよね? そういった場合はどのような支援を行っていますか?
中 プロのカウンセラーにお越しいただいて、心のケアをお願いしています。また、自分の学んでいるコースが、やりたいことではなくなってしまったということも当然出てくると思っていて、その場合はコースの変更も可能です。滋慶学園グループは全国に75校ありますが、その中で転校という形になります。一般的には、退学をして再試験をうけて、翌年再入学という流れが普通ですが、そうではなく滋慶学園グループの学校であれば、転入できます。幅広いジャンルを網羅しているため、どこかには自分の居場所があるのではないかという提案をさせていただいていますね。
岩 転校制度は珍しいですね。
久野さま(以下 久) また、教員全てがカウンセリングマインドを持つという心がけをしています。まずカウンセリングの研修をうけて、支援サポートを学んだ状態で、学生と関わっていきます。昔と今ではサポートをしていく部分が大きく変わってきているのが現状です。
岩 それは具体的にはどのように変わっていますか?
久 以前は就職までの支援でしたが、現在は、学生一人一人の人生におけるキャリアサポートを行うことが重要です。生きる力を育むようにしています。
岩 「どうやって生きるか」というのが今のテーマになっているんですね。恐らくこれからの社会は、就いた職業がなくなるということも考えられます。例えば、税理士は通貨が電子化されたらいらなくなるとも言われていたり。職業がなくなったときどうするかといったことも教えていかなければならないかもしれませんね。
世界が注目するeスポーツ
岩 御校では、映像教育の分野にも力をいれていらっしゃると感じます。映像の市場に将来性をお感じですか?
内海さま(以下 内) はい。今はテレビや映画だけでなく、ネットの映像媒体が増えているので、映像制作に興味を持つ高校生が多くなっています。学生のアルバイト先も、以前は地上波が多かったですが、今はほぼネット配信局です。
岩 なるほど。eスポーツに関しては、プレイヤーだけではなくて、周辺のビジネスを目指されるコースもあり驚きました。
香川さま(以下 香) eスポーツのコースを設立した経緯を説明すると、ある会社から、eスポーツの実況と解説ができる声優さんを探していると依頼がきました。そこではじめて、eスポーツのキャスターという仕事があって、大会などのイベントが行われているいうことに気づきました。そこで「e-sports総合プロゲーマー専攻」「e-sportsイベント専攻」「e-sports宣伝・動画配信専攻」「e-sportsキャスター専攻」を設立しました。それぞれの専攻の学生たちがいれば大会ができるような状況になっています。
岩 それでいうと例えば、声優コースにいるけど、eスポーツのキャスターの勉強もしたいという希望がでてくるのではないでしょうか。
香 はい。それはWメジャーカリキュラムというシステムといって、他のコースの授業もうけれるようなシステムがあります。
中 20歳前後でやりたい仕事と、やれる仕事が一致することはなかなか難しいと思います。システムの中に学生をいれようとしているのではなくて、一人一人考え方も違うので、各人に対して可能性を提示することが、我々の仕事だと思います。職業教育を通して社会に貢献するという一つの大きなコンセプトの中行っています。
岩 なるほど。僕が大学を出るときは、仕事というものは確立した概念がありましたが、今仕事という概念が崩れつつあって、自分自身で人生をアレンジしないといけないんだよということを教えていかなければならないんですよね。
PUBGというゲームの授業の様子
eスポーツの大会はこちらのスペースを使って開催されます
音響設備や、実況も学生さんたちが全て行います。
ゲーマー用の椅子も完備。長時間座ることになるのでしっかり体をホールドする作りになっています。
驚かれる、ヨガの授業
岩 変わった授業はありますか?
香 いつも驚かれるのは、eスポーツの授業の中にヨガがはいっていることです。集中力向上や、気持ちのリラックスというのを、自分のルーティーンの中でできるようになってほしいという思いがあります。
岩 確かにメンタルの部分も重要ですよね。ゲームの分野はグローバル化が避けられないと思いますが、英語のコミュニケーションの授業もありますか?
香 はい。海外のチームとの試合を想定して、試合で使用する実践的な英会話の授業を行っています。そうなると英語が嫌いな学生もモチベーションをしっかり持てています。
岩 特にエンタメ業界は世界を市場にしないと、日本の人口減少問題もありますからね。そういった意味では学生さんたちも社会の変化についていかなくてはいけないので、大変だと思います。
さいごに
岩 仕事の楽しさが今の時代テーマだと思っていて、みなさんがこちらの学校で働く中で、何が魅力的なのか、楽しいところを教えていただければなと。
香 もともと映画監督を目指していたこともあって、自分が考えているアイディアをカリキュラムなどで形にするということが楽しいですね。また、今まであまり接してこなかったeスポーツの分野という新しいチャレンジをさせてもらえるのが楽しいです。
内 私は就職担当を行っていた時期がありまして、学生が育って、就職が決まり、御本人、保護者、業界の方や高校の先生からお礼を言われる。こんな嬉しい仕事はないなと思っています。
久 学生が私の予想を超えていく瞬間というのが楽しくて、用意した授業の反応も実際に実施してみないとわからないものですし、毎日学生たちにエネルギーをもらって、一緒に授業を作り上げることが楽しいです。
中 私は卒業生が活躍されている姿をみるのが嬉しいですね。また、札幌校を新設するなど新しいことにチャレンジできることです。
校内も見学させていただきました
東京放送芸術&映画・俳優専門学校、東京アニメ・声優専門学校の見学もさせてもらいました!
東京放送芸術&映画・俳優専門学校
こんなに大きな撮影スタジオも!こちらで実際に映画の撮影などを行っています。
MACとWindowsも完備されています。
CGやフィギュア造形などの学生さんたちは必ずデッサンの授業を受けるそうです
美術、造形コースの方々の作品です。すごくリアルです。
こちらは産学連携の課題で作られました。映画公開と同時に全国の映画館を行脚しようやく戻ってきたそうです。
ミキサー機材や録音機も完備。企業の方々に貸すこともあるそうです。
ダンススタジオも複数完備。 俳優コースでは日本舞踊の授業があります。時代劇の需要も多いので、着付けの方法や、所作を身につけます。
こちらのセットはなんと美術造形コースの学生さんが作成しました!
東京アニメ・声優専門学校
入り口には大きな鳥居が。夢が叶うよう、祈ります。
多くの声優さんが来校されています。
入り口近くの廊下にはウィンドウが。アニメの台本など貴重な資料が並びます。
実際のアニメのラフも飾られていました 。
アニメーションは手描きとデジタル両方を学ぶことができます。
文化祭などのイベント時の正装はコスプレ着とのこと。こちらのモデルも学生さんです。
ホールはイベントにもつかわれます。たくさんのマンガを保管。
最後までご覧いただきありがとうございました。
次回の記事は、放送芸術学院専門学校/大阪アニメーションスクール専門学校のミュージカル公演をレポートします。こちらも是非御覧ください。
投稿者:大塚芙美恵