「きむらゆういちのゆうゆうトークショー」ミロコマチコさん<後編>トークショー
絵本童話作家のきむらゆういち先生が定期的に開催しているイベント「ゆうゆう作家トークショー」の訪問レポート。前編のライブペインティングの完成はいかに?さらに後編は、きむら先生とミロコマチコさんのトークショーの様子をお届けします。
前編を読んでくださった方は、ドキドキされたと思います。こちらがライブペインティングの完成の作品です!(撮影が下手でごめんなさい)
イベントの後半はお待ちかね、きむらゆういち先生とミロコマチコさんのトークショーとなりました。
絵を描いているとき、私も生きものになる
きむらゆういち先生(以下、きむら) ミロコさんは彗星のごとく現れて、海外を含めあらゆる賞を一年で総なめ。展覧会も大盛況ですが、実は、デビュー前に書いていらしたのは文章だけで、絵は描いていなかったらしいですね?
ミロコマチコさん(以下、ミロコ)はい。当初はお話を書く人だったんです。絵は、絵の上手な友達に描いてもらっていました。
きむら お話を書き始めたのはいつごろですか?
ミロコ 高校を卒業してから人形劇団に入り、人形劇のシナリオを作り始めたんです。人前が苦手だったので、お話を作るだけの人をやりたかったのですが、人形劇団って大抵、人が足りないのでそうもいかず、蝶々や通り過ぎるネコの役などもやりました。そして、人形劇の原作は絵本が多いじゃないですか。どんな原作やろ、と思って読み始めたのですが、「こんなにおもしろい世界があったんだ、それなら私もやりたい!」と思い、友達に絵を頼んで絵本づくりを始めたんです。
きむら 絵を描きだしたきっかけは?
ミロコ だんだん、人に絵を描いてもらっても、自分のイメージどおりにならないことがわかってきたんです。それなら自分で描こうと思ったのですが、子どもの頃描いたきりで、絵のことは何もわからなくて。まずは絵のことを知りたいと思い、大阪のアートスクールの絵本コースに週一で通いながら、絵を描き始めました。そして、コンペに応募、受賞したのが、絵本を出すことになったひとつのきっかけです。
きむら 画材は主に何を使っているんですか?
ミロコ あるものはなんでも使います。オイルパステル、色えんぴつ、クレヨン・・・。
自分がやってきた形跡が生きものになればいい
きむら ライブペインティングは、驚きの展開でしたが、最初に構想があるのか、それとも描きながら構想が変わっていくんですか。
ミロコ 絵本はちゃんと考えるんですけど、こういうのは何も考えてなくて、適当です。ビニールを貼ったらしろくまっぽくなるかな、と思ったのですが、もし誰かが「あ、しろくまだ」と言ったら、変えようかなと思ってました(笑)。
きむら 常に過去を壊していくような、どうなっちゃうの?という、イメージをひっくり返すような緊張感があってね。あの絵好きなんだけどな、あ、つぶしちゃうんだ~と思いながら、見ていました。
ミロコ(ライブペインティングは)過程を見るものなので、最後はいつも、私は自分がやってきた形跡みたいなものが生きものになればいいなあと思っているんです。別に最後のこの形が大事なのではなく、途中の感じが既に生きものなので。
きむら ミロコさんの作品は、生きものに関するテーマが多いですが、テーマを選ぶ理由はあるんですか?
ミロコ 最初に生きものを描きだしたときは、ただ「造形がおもしろい」ことを理由に描いていました。いろんな生きものを描いて夢中だったんですけど、ふと、「なぜ私はこんなに生きものを描きたいんだろう?」と考えてみたんです。すると、絵を描いているとき以外は、私は生きていることを実感しにくいんだ、ということに気付いたんです。絵を描いていないときは、私はあまり生きていないんですよ。
きむら え~?
ミロコ それがイマイチだなあと思っていて。絵を描いているときは、すごく気持ちが向かっていっているんですね。でも、たとえばこうして、きむらさんとしゃべっているときなどは、注意力が散漫になっていまして、「目を見なくちゃいけないかな」「あごのひげを見ようか」とか、実はあまり話を聞いてないんです(笑)。そういうくだらないことにめっちゃ惑わされて、あまり大事じゃないことに気をとられがちなんです。でも、絵を描いているときは、絵だけのことを考えていて、それが、生きているという実感になるんです。なぜかというと、例えば、笑っている人の絵を描いていると、自分も自然に笑ってたり、怒っている人を描けば怒ったり皺が寄ったりして、絵を描いているときは、私も生きものになる。脚を描いているときは脚の気持ちになるし、目を描いているときは目の気持ちになる。自分が何かやっているという実感があって、気持ちいいんです。
きむら なるほどね、何か実績を残そうというんじゃなく、やっていることそれ自体が気持ちいいんですね。上手く描こうとかじゃなく。
ミロコ 一応考えます(笑い)
きむら 動物を描くとき、形態は考えますか?
ミロコ これ(ライブペインティングのしろくま)も、多分ちぐはぐしていると思いますよ。歩き方が変。私の動物の絵は、いつも下半身が弱いって言われるんですよ。確かに今日も、下半身が弱い。頭のほうから描いて、大体おしりのほうのスペースがなくなるので、おしりをちっちゃくしちゃう。でも、それもいいか、と思ってます。あんまり思い通りにならないほうが好きなので。
きむら 以前、田島征三さんに「自分のイメージどおりに絵が描けないんですがどうしたらいいでしょうか」と質問したら、彼は「出来上がった絵を、描きたかった絵と思えばいいんだよ」というお答えでした。それに近いですね。
「ああ、私はスケッチしないんだな」って思ってます
最後に、会場のお客様からの質問に答えていただきました。
質問1) 動物を描くときは、動物園などに行ってスケッチされるのですか?
ミロコ 動物園に行くのは好きなんですけど、スケッチはあまりしない。ず~っと見てます。おもしろすぎて、スケッチを描いてるひまがないです。本当はスケッチしたいなと思うんですけど、絶対せずに帰ってくるので、「ああ、私はスケッチしないんだな」って思ってます(笑)。でも、見ることで「カンガルーはだらしない」とか特徴は自分の中でつかんでるかな。形よりも、「走っているときにやたら力がある」とか、そういうことに興味があって、覚えてたりします。形状は図鑑などを見て描きます。
きむら 絵本作家のあべ弘士さんは旭山動物園の飼育係を経験されているから、動物の体のことを理解していて、一見、忠実でない描き方をしているようで、実は正しく描けているんですよね。ミロコさんの絵はあべさんに近くて、どんな描き方をしても、本来の動物の骨格とかにちゃんと合ってるんですよ。だからスケッチなどもしているのかなと思ったんですが、特別なことはしてないんですね。
ミロコ はい。じ~っと見たりするのはすごく好きなんだけど、何度も描くと飽きるので、ちゃんとスケッチして、それを直して・・・とかはしません。図鑑が優秀なんですね。
質問2) 絵を描こうと思ったときのことを、もう少し詳しく聞かせてください
ミロコ 私も子どもの頃は、絵を描くのが好きやったんやな、と思い出したことかな。でも、絵が上手い人が周りにいっぱいいたので…。先生も、隣で描いてる友達には「すごいね、はなちゃんのは上手ね~。マチコちゃんのは・・・なにかしら?」といった感じで、私は首を描いてるのに、「胴体がすごく細いわねえ」と言われたりしてました。今思えば、大人は悪気がないんです。でも私は、自分は絵がめちゃ下手なんやな、と思い込んでしまって。成長と共に音楽を好きになったり、高校の芸術選択科目でも、「私は美術じゃないんだ」と思いこんで音楽選んだりして、より美術から遠ざかってました。でも、再び描き始めたときに、すごく楽しかったので、子どもの頃に絵を描くことが好きだったんだと思い出したんです。勝手に自分で諦めたというか、ほかのものに興味がいってただけで。
きむら 絵を再び描こうと思った一番のきっかけは?
ミロコ 絵本をつくりたいという思いです。自分のつくったお話に、絵をつけたいと思って、大学生のときに「かめぴょん」という絵本をつくりました。カメがすきで、描いたカメ人間はめっちゃ下手だったけど、めっちゃ楽しかったんです。そうして絵を描く喜びを知ってから、絵本を何年も描かずに、絵ばっかり描いてた時期もありました。今は「絵本がやりたいんやった!」と思い出して、絵も絵本も両方やれているので、とても幸せです。
きむら 最後に、絵本作家をめざす方に何か一言お願いします。
ミロコ まだそんなに経験を積んだわけではないので、人に言えることはないんですけど・・・好き放題やってください!(笑)
きむら ですよね。売れるために迎合するより、好きなことをした人が、最後に作家として残っている気がしています。今日はありがとうございました!
まだ見ぬ才能に出会いたい 。それが自身の学びにもつながる
『あらしのよるに』『あかちゃんのあそびえほん』シリーズなど、数々のヒット作を手がけるきむらゆういち先生。その活動の場は、絵本・童話、小説などの作家としてだけでなく、造形、教育、テレビのアイディアブレーンなど、とどまるところを知りません。今回のミロコマチコさんのように、トークショーに出演する作家の展覧会には、必ず事前に足を運び、作品の力をご自分の目で確かめるという、きむら先生。ご自身が主宰する「ゆうゆう絵本講座」は、通学のほか通信講座も開設し、絵本づくりを学べる環境を惜しみなく、広く提供しています。
「モノを作ることや、絵本、読み物…そのほかにも、長年多くの
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投稿者:michelle
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