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子どもがYouTuberになりたいと言ったら、 親はどう対応すればいいですか?

 わが子がYouTuberになりたいと言い出した!

「ウチの息子がYouTuberになりたいと言い出したんです。中学3年生で、これから受験だというのに…」ある日のこと、どんよりした顔の同僚から困った様子で相談が。
今やYouTuberは「将来なりたい職業ランキング」に登場するほど身近な存在。芸能人以上に稼ぐYouTuberもいるよね~なんて話をしていたところでした。

 

将来ないりたい職業

将来なりたい職業 2017年3月ソニー生命調べ

 

www.itmedia.co.jp

 

 

子どもyoutuber

YouTuberになりたいという中3男子のAくん

 

子どもyoutuber

AくんがハマっているPockyさんのYouTubeチャンネル

 

親としては、子どもの夢を言下に一蹴するのは憚られるし、かといって職業とするには不安の方が先に立つ。
わが子がYouTuberになりたいと言ったら、親はどう対応すればいいのでしょうか。進学と就活に関する著書を多数出版し、高校生への進路相談経験も豊富な石渡嶺司さんにアドバイスをいただきました。

 

子どもyoutuber  石渡嶺司

石渡嶺司(いしわたりれいじ)
1975年北海道札幌市生まれ。ライター・大学ジャーナリスト。教育問題、就職活動を主なテーマとする。『キレイゴトぬきの就活論』(新潮新書)、『女子学生はなぜ就活に騙されるのか』(朝日新書)、『教員採用のカラクリ』(中公ラクレ、共著)など著書多数。 主な連載は「ホンネの就活ツッコミ論」(日経カレッジカフェ)、「石渡嶺司の反就活学」(毎日新聞大阪本社)、「キャリアの流儀」(北海道新聞社)「大学も就活もコノヤロー」(Yohoo!ニュース個人)など。

 

YouTuberを職業として見てみたら


――そもそもYouTuberはどのように収入を得ているのですか?


面白い動画を投稿して話題を集め、再生回数を増やす。その再生回数に応じた報奨金をもらい、それで生計を立てる、というのがYouTuberの収入のしくみです。
ヒカル(Hikaru)さんの例で見てみましょう。


 

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2017年4月の月間チャンネルランキング1位に輝いたヒカルさん。チャンネル登録者数183万人、YouTubeランキング11位、「やってみた」系の実験検証で人気のYouTuberです。
最近の投稿で人気だったのは、コチラ。なんと再生回数1132万回超の大ヒット動画です。

 

当たりはなかった?祭りくじで悪事を働く一部始終をban覚悟で完全公開します

www.youtube.com

これは、「祭りくじって当たりは入ってるの?」という多くの人が疑問に思っていることをヒカルさんが体当たりで検証した動画。屋台にあるくじをすべて購入して、その場で開封している最中、怖い人が登場してきたり……と、ハンパない臨場感です。
一方、スポンサーから依頼を受けて作った動画もあります。

 

大学に潜入?現役の生徒に混じってラファエルと授業受けてみた

www.youtube.com

 

これらから得られる収入を推測すると、動画1再生=0.1円と言われているので、
前者は、再生回数1,120万回×@0.1円=112万円
後者は、スポンサーからの広告料として500~1000万円と推測されます。

 

――動画1本でその収入! 好きなことをして、こんなに稼げるなら「YouTuberになりたい!」と考える若者が増えるのも頷けますね。

トップYouTuberと呼ばれる人だと、そうですね。ただし、世間の人もお気づきのとおり、YouTuberを本業にできる人はごく一握りです。
これからYouTuberを目指す若者に、リスクについてお話しします。

 

子どもがYouTuberになるリスク 

リスク① YouTuberは飽和状態
誰でも簡単に新規参入できることから、YouTuberはすでに飽和状態です。「やってみた系」「ゲーム実況系」「玩具レビュー系」……ジャンルは多種多様ですが、どれもどこかで見たことのある内容になりがち。オリジナリティある切り口や工夫がないと、勝ち目はありません。

 

リスク② ネタのやりつくされ感、過激化で犯罪になることも
YouTuberが増えた結果、ネタもやりつくされています。そのため、より過激な動画へとエスカレートする人もいます。
冷蔵庫に入ってバイト先を閉店に追い込んだ事件や、コンビニおでんに指を突っ込んだ事件を覚えている方も多いでしょう。初めはコーラの一気飲み程度の「やってみた系」動画だったのが、次第に歯止めが効かなくなり、炎上騒ぎになったり周りに多大な迷惑をかけたりして高額な損害賠償を請求されるような事態になったら、一生が台無しです。子どもではその行為が適正かどうか、判断できないこともあります。おふざけも度が過ぎると「犯罪」になる場合があることを、十分理解しておく必要があります。

 

リスク③ 個人情報の流出
動画は静止画よりも個人を判別しやすいソースです。「顔出し」していればもちろんですが、匿名を使ったり顔を隠したりしていても、背格好や動作で個人を特定されて、住所や名前、学校などを知られトラブルに巻き込まれることも。ネット上で個人情報を晒されたりしたら、自分だけではなく家族や友人にも迷惑の及ぶことがあり、大変危険です。

 

リスク④ メンタルを病む

ネットにはネガティブコメントがつきものです。動画がつまらないと酷評されることもあれば、キモい、ウザいと投稿者自体が攻撃に晒されることも。そして煽られた結果、反論したら炎上してしまったり……。他人からディスられたり悪意をぶつけられたりすることに慣れていない人、とりわけ子どもはメンタルを病む危険があります。

 

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――うーん。やはり厳しいし、怖いですね。ただ、中学3年生だと「そんなことわかってる! 注意すればいいんでしょ」と聞く耳を持たなさそう。そんなとき、どう言えばより説得できるでしょうか?

お金のことを出すと、納得すると思います。

 

リスク⑤ 収入が不安定
先のヒカル(Hikaru)さんの例では、「動画再生回数×@0.1円」で計算しましたが、現在はこの単価@0.1円が0.05~0.025円まで切り下がっているという報道があります。
Aくんが、素人ユーチューバーとしては大ヒットの域である再生回数10万回をめでたく達成したとしましょう。そこから得られる収入は、@0.1円の場合で10,000円、@0.025だと2,500円です。再生回数10万回で2,500円ですよ!
有名ユーチューバーであればスポンサーがつくこともありますが、新規参入したばかりのAくんは、再生回数を増やすべくコツコツ投稿を重ねるしかありません。ネタ切れの恐怖におびえながら、週1本ずつコンスタントに投稿したとして、1か月でようやく10,000円。
動画撮影に数時間、その後の編集作業にまた数時間。動画の題材のために購入したもの(ヒカルさんの例では、くじの代金15万円!)、撮影用の機材、編集用のPC・ソフト……。
動画制作に費やした時間や費用を考えると、決して見合わないと納得するのではないでしょうか。

 

専業YouTuberである必要はない

子どもがYouTuberになりたいと言ったら、親はただ反対するのではなく、こういった「リスク」をきちんと説明して、ネットとの上手な付き合い方、トラブルを未然に防ぐ方法を伝えることが大切です。
そのうえで、専業YouTuberでなくてもいいのでは、と話してみてください。
人気YouTuberになった人たちには、投稿内容に対する並々ならぬ熱意、はっとさせられる切り口、巧みな話術といった、その人にしか表現できない魅力があります。これからYouTuberを目指すなら、この人たちに負けないくらい得意分野の知識を深める必要があるでしょう。
そのためにも、今は本業である学校生活をしっかりこなして視野を広げ、そのうえで副業でYouTuberとしての表現方法を磨いてゆけば、と伝えてはいかがでしょうか。
それから、大学生をしながらYouTuberになる、という方法もあります。人気YouTuberのコンビ、水溜りボンドのお二人は現役の大学生です。人気にならなくても、兼業であれば趣味程度にとどめることもできます。

 

石渡さん、具体的なアドバイスをありがとうございました。

私も学齢期の子を持つ親として、ただ「勉強しなさい」では子どもも反発するだろうから、得意分野に関する進路のアドバイスを加えてあげるといいのかなと思いました。例えば、ゲームが好きなAくんなら、ゲームを作る仕事だと○○学部とか△△会社があるよ、ファンイベント系だと○○という方向性もあるよ、というふうに。

ネットとの上手な付き合い方と、今どきの進学先と就職先について、親も情報をアップデートしなくては! ですね。

 

石渡嶺司 子どもyoutuber

 

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投稿者 promon